【禁断の歴史】厳島神社の大鳥居、なぜ「要塞化」していたのか?修繕の裏で語られる秘話

2019年から2022年まで、世界遺産・厳島神社の大鳥居がまるで「要塞」のような白いシートと鉄骨足場に完全に覆われ、姿を消していたことをご存知でしょうか。

私もニュース映像で初めてその様子を見たとき、本当に驚きました――SNSでも「要塞化」と話題になり、地元や観光客から「幻の鳥居」と呼ばれるほど異例の事態でした。

 

なぜ日本を代表する神社の鳥居が厳戒態勢で修繕されたのか?

 

そこには70年ぶりの大規模修理に隠された、見た目では分からない深刻な劣化や安全対策、そして伝統技術と最新技術の融合という、壮大なプロジェクトの真実がありました。

 

当初1年の予定が3年半に延長された理由、極秘で行われた修繕工事の背景や復活までを、改めて詳しく調べてみました。

目次

「要塞化」の衝撃—鳥居が消えた日

2019年6月17日、歴史的瞬間の始まり

2019年6月17日厳島神社大鳥居に異変が起こりました。

観光客が見慣れた朱色の美しい姿が、突如として巨大な足場と白いシートに包まれ始めたのです。

この日を境に、世界中から年間400万人が訪れる宮島のシンボルは、完全に姿を消すことになりました。

地元住民でさえ「まるで要塞のよう」と驚いたほど厳重な覆いでした。

観光客の困惑と話題沸騰

当初、多くの観光客は一時的な工事だと思っていました。

しかし、日が経つにつれて覆いが完全になり、外からは全く鳥居の姿が見えなくなったのです。

SNSでは「幻の鳥居」「宮島の要塞」といったハッシュタグが拡散され、この異様な光景は全国ニュースでも取り上げられました。

封印された理由—70年ぶりの危機

想像を超えた深刻な劣化

要塞化」の真の理由は、予想を遥かに超えた大鳥居の劣化状態にありました。

約70年ぶりの本格的な調査で判明したのは、見た目には分からない内部の深刻な損傷でした。

白蟻と腐朽菌による内部侵食

主柱の内部は白蟻腐朽菌によって空洞化が進んでおり、直径40~50cm、深さ約4mもの巨大な空洞が発見されました。

海水に浸かる過酷な環境下で、木材の芯まで侵食が進んでいたのです。

構造安全性の危機

専門家の調査により、大鳥居の構造安全性に重大な問題があることが判明しました。

このまま放置すれば、台風や地震などの自然災害で倒壊する危険性さえあったのです。

なぜ「要塞化」が必要だったのか

4つの重要な理由

  1. 作業スペースの確保:海中に立つ大鳥居の修理には、安定した足場が不可欠
  2. 天候・台風対策:広島湾の厳しい気象条件から作業員と工事を守る必要がありました
  3. 極秘伝統工法の保護:門外不出の修理技術を外部の目から隠す必要がありました
  4. 安全確保の徹底:観光客と作業員双方の安全を最優先に考えた結果でした

修繕工事の全貌—伝統と革新の融合

当初1年が3年半に延長された理由

工事が始まると、次々と予想外の問題が発覚しました。

調査を進めるたびに新たな劣化箇所が見つかり、当初の修理計画では対応しきれないことが明らかになったのです。

発見された深刻な問題

  • 主柱の空洞化が予想以上に進行
  • 袖柱や貫(ぬき)にも腐朽が発見
  • 屋根部分(島木)の損傷も判明
  • 金具類の腐食が想定を超えていた

使用された最高級素材

広島産楠材による精密復元

傷んだ主柱と袖柱の修理には、広島産の楠(くすのき)を使用。

空洞部分にパズルのように隙間なく楠材を詰め込む「埋木補修」という伝統技法が用いられました。

屋根の完全再生

屋根部分(島木)は伝統の「檜皮葺(ひわだぶき)」技法で葺き替えられました。

職人が口に何十本もの竹釘をくわえて作業する、まさに匠の技が継承されました。

革新的な耐震補強技術

ステンレス鋼材による補強

主柱の根継部には、海水と潮風に耐える高耐食ステンレス(SUS312L/NSSC270)製のバンドを設置。

総重量約665kgものステンレス鋼材が使用されました。

炭素繊維による最新補強

柱頭部には炭素繊維を巻き付け、樹脂で固める最新の耐震補強技術を導入。

伝統的な木造建築に現代の技術を融合させた、世界でも例を見ない修理方法でした。

「光る要塞」の神秘

夜間のライトアップ効果

工事期間中、大鳥居を覆う足場は夜間にライトアップされていました。

この光景は「光る要塞」と呼ばれ、昼間の白い要塞とは全く違う神秘的な美しさを醸し出す形で話題に。

工事中だからこその特別な魅力

多くの観光客が「今しか見られない鳥居の姿」として、あえて工事中の宮島を訪れました。

神社側も鳥居の模型を設置したり、工事の様子を紹介する特別展示を行うなど、工事期間中ならではの魅力を演出。

要塞解除—2022年12月、感動の瞬間

3年半ぶりの姿現し

2022年12月、ついに白いシートが取り外され、美しく蘇った大鳥居が姿を現しました。

2023年の初詣で多くの人が目にしたのは、140年以上の歴史を持ちながら、まばゆいばかりに輝く「新生」大鳥居でした。

100年の耐久性を実現

今回の修理により、大鳥居は「海中でも100年以上現存」できる耐久性を持つ大鳥居に。

伝統工法と最新技術の融合によって、次の世代にも確実に引き継がれる構造に生まれ変わったのです。

秘話—工事現場で起きた奇跡

職人たちが語る不思議な体験

工事に携わった職人たちの間では、いくつかの不思議な体験が語り継がれています。

作業中に突然風が止んだり、困難な作業の時に潮の流れが変わったりと、まるで神様が工事を見守っているかのような出来事が度々起こったそうです。

伝統技法の継承

この工事によって、失われつつあった伝統的な木工技術が次世代に継承されました。

特に「埋木補修」や「檜皮葺」といった技法は、現代では極めて少数の職人しか知らない貴重な技術でした。

要塞化が残した教訓

文化財保護の新たな基準

厳島神社の「要塞化」修理は、文化財保護の新たな基準となりました。

見た目の美しさだけでなく、内部構造の徹底的な調査と修理の重要性が全国の文化財関係者に認識されたのです。

観光と保護の両立

工事期間中も多くの観光客が宮島を訪れ、「工事中の鳥居を見る旅」として新たな観光の形を生み出しました。

これは文化財の保護と観光業の両立を示した形になったと思います。

まとめ—要塞化に隠された真実

厳島神社大鳥居の「要塞化」は、単なる修理工事ではありませんでした。

70年ぶりに明らかになった深刻な劣化、極秘で行われた伝統技法の継承、そして現代技術との融合—これらすべてが、日本の文化遺産を未来に残すための壮大なプロジェクトだったのです。

3年半という長い工事期間は、当初の予想を大幅に超えるものでしたが、その結果として私たちは100年以上の耐久性を持つ「新生」大鳥居を手に入れることができました。

あの白い要塞の中で行われていたのは、単なる修理ではなく、「奇跡の再生プロジェクト」だったのです。

現在、美しく蘇った大鳥居は、その内部に最新の耐震技術と伝統の匠の技を秘めながら、再び多くの人々を迎え入れています。

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