ーパわ^宮島といえば大鳥居や五重塔が定番ですが、実は島の中を歩いてみると、江戸時代から現代までいろんな時代の建物が自然に混ざりあっているのが面白いんです。
たとえば町家通りには、ベンガラ格子や白壁が美しい昔ながらの町家が並んでいて、歩いているとまるで昔にタイムスリップした気分になります。
そうかと思えば、表参道には景観に配慮しつつ、現代っぽいデザインのカフェや新しいお店もどんどん増えていて、伝統とモダンが本当に上手く共存しています。
特に印象的だったのは、外観は昔っぽくて中はオシャレにリノベされた建物や、景観条例に合わせて色や看板も工夫された新世代の店舗が多いこと。
コンビニまで宮島らしい落ち着いた雰囲気で、町並みに違和感なく溶け込んでいるのは驚きでした。
建築巡りをしながら、町歩きやグルメも楽しめる宮島は、まさに“生きた建築博物館”って感じです。
今回はそんな宮島の新旧建築の見どころや、自分が歩いてみて感じたリアルな体験を中心に紹介したいと思います。
江戸の面影を残すレトロ建築群
町家通り~うなぎの寝床に息づく商家の知恵
宮島で建物めぐりを始めるなら、まずおすすめなのが町家通り。
ここには江戸~明治時代から残る昔の商家がずらっと並んでいます。
町家通りは“重要伝統的建造物群保存地区”の中心エリアで、入り口は狭いのに奥行きがものすごく深い「うなぎの寝床」と呼ばれる形の建物が多いのが特徴です。
実際歩いてみると、細い入口から想像できないくらい奥まで続くつくりで驚きました。
通りに面した母屋、その奥に中庭や台所、さらに廊下を通って風呂場まで…と限られた敷地をしっかり使う江戸商人の知恵を感じます。
格子窓からやわらかい日差しが入り、瓦屋根や赤いベンガラ塗りの壁も昔らしい雰囲気。
歩いているだけで、タイムスリップしたような気分になれて、町家通りは本当に“レトロ建築好きにはたまらない”通りです。
歩いて感じる町家の魅力
町家通りを歩いていて最も印象的だったのは、建物一つ一つに微妙な個性があることです。
同じベンガラ塗りでも色の濃淡が違い、格子のデザインも家ごとに異なります。
現在も多くの建物が土産物店や飲食店として現役で使われており、伝統建築が観光地として機能している見事な例だと感じました。
特に夕暮れ時の格子窓から漏れる温かい光は、何百年も変わらない宮島の夜の風景を演出していて、心に残る美しさでした。
東町・西町~神職と宮大工が築いた静寂の街並み
表参道のにぎやかさから少し離れると、東町・西町エリアがあります。
ここは神職や宮大工さんなど、昔から神社やお寺に関係する人たちが住んでいた住宅街です。
西町は、石垣や石段が続く小道があちこちにあって、社家の重厚な家並みや、落ち着いた雰囲気が今でも残っています。
当時の格式や職人さんたちの誇りを感じるエリアです。
一方、東町は江戸時代から昭和初期にかけてできた町家や元旅館などが多く、軒裏の垂木や瓦、格子が並ぶ建物が統一感のある美しさを作っています。
メイン通りの賑わいとは対照的に、石畳の静かな道を歩くと足音が心地良く響いて、ゆっくりと町の歴史や空気を味わえるのが魅力です。
職人町の誇りを感じる建築美
このエリアを歩いていて感じるのは、建物一つ一つに込められた職人の技術と誇りです。
特に西町の社家住宅は、神に仕える人々の住まいにふさわしい品格と美しさを備えています。
石垣の組み方、庭の設え、建物の配置まで、すべてに計算し尽くされた美意識を感じます。
現代の住宅にはない、時間をかけて作り上げられた建築の重みと深みがここにはあります。
宮島町家交流館で感じる社家の格式
社家住宅の建築をじっくり体験できるスポットとして立ち寄ったのが、「宮島町家交流館」です。
ここは明治時代に建てられた神職さんのお家を修復して公開していて、ふだんはなかなか見られない社家住宅ならではの格式や美しさを間近で体感できます。
特に驚いたのは、一般の古い町家とは違う、きちんとした書院造りの座敷の美しさ。
床の間や違い棚の配置、欄間の透かし彫りまで、神職の暮らしや社会的地位にふさわしい落ち着きや工夫が感じられます。
お庭もきれいで、石の置き方や木や花の配置から当時の住人の美意識が伝わってきたのも印象的でした。
ボランティアガイドさんのお話では「この家は代々、厳島神社の祭事に携わる方が住み、建物の隅々まで“神様に仕える人の心”みたいなものが現れているんですよ」とのこと。
建築を見ながら、その家で暮らしてきた人たちの想いまで伝わってくるような、不思議な経験になりました。
旧江上家住宅主屋で宮大工さんの技術を見学
もう一つ見逃せないのが、廿日市市の重要文化財になっている旧江上家住宅主屋です。
こちらは宮大工さんを職業にしていた家の住宅で、職人さんならではの建築技術をあちこちで見ることができます。
建物に入って最初に目を引くのが、とても立派な天井の梁組みです。
宮大工さんの技術を活かした木と木のつなぎ方の美しさは、芸術品のよう。
柱と梁のつなぎ目の精密さや、木材の選び方・使い方から、職人さんの高い技術が伝わってきます。
また、建具や欄間などの細かい部分にも、普通の民家では見られない工夫と美しさが込められていて、「住宅と工房を兼ねている」ことがよく分かります。
案内してくださった学芸員の方は「宮大工さんの住宅だからこそ、建築技術のお手本のような役割も果たしていたんですね」と話してくださり、職人さんのお家ならではの特徴を教えてもらいました。
滝町(滝小路)~苔むした石垣に刻まれた歴史
滝町は宮島の南西にあって、粟島神社や林家住宅などが残る、古い町並みが楽しめるエリアです。
江戸時代の終わりごろからできたこの辺りは、苔むした石垣や坂道がとってもきれいで、レトロ建築が好きな人にも人気のスポットになっています。
石段に沿って家が建ち並び、限られた土地をうまく使って、それぞれの家が海や山の景色をちゃんと取り込んでいるのに感心します。
武家屋敷風の建物も残っていて、宮島ならではの多彩な建築の歴史を感じながら、じっくり散策できるエリアです。
このあたりを歩くと、苔むした石垣や味のある坂道が続いていて、まわりの家並みも地形に合わせてうまく建てられているのが分かります。
それぞれの家から海や山の景色がちらりと見えたり、武家屋敷のような建物にも出会えて、宮島の建築の奥深さを楽しむことができます。
自然と建築の調和を実感
滝町を散策して最も印象深かったのは、建物と自然の見事な調和でした。
石垣には苔がはえ、庭には四季折々の花が咲き、四季の移ろいを楽しむこともできます。
人工の建築でありながら、まるで自然の一部のように風景へと溶け込む姿に、日本建築の真髄を見た思いがしました。
ここには、現代建築にはない「時間が育んだ建築と自然の一体感」が確かに息づいています。
現代に息づくモダン建築
表参道の新世代店舗~伝統を尊重するデザイン革命
宮島の表参道には、景観条例に配慮しながらも現代的なデザインを取り入れた新しい店舗が数多く誕生しています。
ガラス瓦を使ったモダンな外観の店舗や、古民家を現代的にリノベーションしたおしゃれなカフェなどを見ることができます。
特に印象的なのは、外観は伝統的な和風建築の形を保ちながら、素材や色彩、ディテールに現代的なセンスを取り入れた店舗です。
木材の使い方、照明の配置、サインデザインまで、すべてが周囲の景観との調和を保ちながら、新しさを表現しています。
新旧融合の絶妙なバランス
表参道の新店舗を見て回ると、デザイナーたちの景観への深いリスペクトを感じます。
派手さを控え、素材の質感や色の調和を大切にしたデザインは、一見地味に見えますが、よく見ると非常に洗練されています。
古い町家と並んでも違和感がなく、むしろお互いを引き立て合っているのは、規制があるからこそ生まれた創造性だと感じました。
景観配慮型コンビニ~ローソン宮島店の挑戦
宮島で最も話題になった現代建築の一つが、景観に配慮して設計されたローソン宮島店です。
一般的なコンビニエンスストアの青と白のブランドカラーを封印し、茶系の落ち着いた色調で建てられたこの店舗は、宮島の伝統美を活かした存在だと思います。
建物の形状は和風を意識した切妻屋根を採用し、外壁は木調のパネルを使用することで、周囲の町家群との調和を保っています。
看板も控えめなサイズで、宮島らしい上品さを表現。
商業建築の新しい可能性
このローソンを実際に見て、とても驚きました。
企業のブランドイメージと地域の景観を保っていて、宮島にしっくり馴染んでいたからです。
内部は通常のコンビニと変わらないですが、外観は完全に宮島の景観に溶け込んでいます。
これからの観光地開発のお手本になる建築だと思っています。
リノベーションカフェ~古民家に宿る新しい命
宮島では、古い町家や民家をリノベーションしたカフェや雑貨店が増えています。
これらの建物は、宮島の昔ながらの歴史を残しつつ、内部を現代的な用途に合わせて改装。
建築の新しい活用方法として設計しています。
梁や柱を活かしたインテリアデザインに、現代的な照明や家具を組み合わせることで、古民家ならではの落ち着いた雰囲気が際立ち、訪れる人々に心地よく過ごせる時間を生み出してくれます。
歴史が息づく現代空間
リノベーションカフェで過ごす時間は格別です。
古い木材の温もり、高い天井から生まれる開放感、そして現代的な快適さが見事に調和しています。
建物の歴史を感じながら現代的なサービスを受けられる贅沢さは、新築の建物では決して味わえない魅力です。
職人の技術で作られた古い建物が、現代の技術で新しい形で再生していることを実感できます。
伝統建築の王道~厳島神社建築群
厳島神社~海に浮かぶ建築の奇跡
宮島の建築巡りで何といっても外せないのが、やはり厳島神社です。
平安時代から続いていて、海の上に建っているっていう珍しい立地や、朱色の美しい社殿は何度見ても感動します。
本殿、拝殿、祓殿がぐるっと回廊でつながっている構造は、潮の満ち引きに合わせて設計されていて、満潮のときは神社がまるで海に浮かんでいるみたいです。
干潮になると、海底の柱や基礎がはっきり見えるので、建物のつくりも間近でじっくり観察できるのが面白いです。
自然と一体化した建築の神秘
厳島神社を訪れるたびに感動するのは、建築と自然が完全に一体化している美しさです。
朱色の建物が青い海と空に映える色彩の美しさ、潮の満ち引きによって刻々と変化する景観、そして1400年以上にわたって維持されてきた建築技術の素晴らしさ。
これほど自然環境と調和した建築は世界中を探してもそうそうありません。
五重塔~空に向かう垂直の美
厳島神社と並んで宮島のシンボルとなっている五重塔は、室町時代に建立された高さ27メートルの美しい塔です。
朱塗りの鮮やかな色彩と、空に向かって伸びる垂直線の美しさは、島のどこから見ても印象的な存在感を放っています。
特に桜の季節には、薄紅色の花と朱色の塔が織りなす色彩の調和が見事で、多くの人々が写真を撮ります。
また、夕暮れ時には西日に照らされて金色に輝き、幻想的な美しさを見せてくれます。
時を超える垂直美の力強さ
五重塔を間近で見上げると、その圧倒的な存在感に驚かされます。
500年以上前の技術で建てられたとは思えないほど、完璧な建築です。
各層の屋根の反りの美しさ、柱や梁の組み方の精密さ、そして何より空に向かって伸びる力強さにパワーをもらっています。
建築散策のすすめ~街歩きで発見する宮島の奥深さ
建築巡りコース設計のコツ
宮島の建築を効率よく楽しむには、テーマを決めてコースを設計するのがおすすめです。
「江戸の町家巡りコース」では町家通りから東町・西町を経て滝町へ、「新旧融合コース」では表参道の新店舗から伝統建築へと、それぞれ異なる魅力を味わえます。
建築を見る際は、全体の形だけでなく、細部にも注目してください。
格子のデザイン、瓦の種類、木材の仕上げ方、石垣の積み方など、職人の技術が光るディテールに宮島建築の真の魅力が隠されています。
グルメと建築の相乗効果
宮島の建築巡りの楽しさは、美しい建物の中で地元の食文化も一緒に味わえることがうれしいポイント。
古い町家を改装したカフェで飲むコーヒーは格別です。
伝統建築の中で食べる宮島名物のもみじ饅頭やあなご飯は、その場の雰囲気も含めて幸せな空間に。
五感で感じる建築の魅力
建築巡りをしながらのグルメは、視覚だけでなく味覚、嗅覚、触覚も含めた五感で建築を感じる貴重な機会です。
古い木材の香り、畳の感触、窓から見える庭の景色、そして美味しい食事。
これらすべてが組み合わさって、忘れられない宮島の思い出となります。
まとめ~宮島は“生きた建築博物館”だった
宮島を歩きながら毎回感じるのは、この島はただの観光地ではなく、本当に“生きた建築博物館”みたいだなということです。
江戸時代から残る町家も、最近リノベされたカフェも、それぞれの時代の建物が現役で使われていて、島全体が一つの景色をつくっています。
驚くのは、厳しい景観ルールがある中でも、みんな伝統を大切にしつつ、新しいアイデアをどんどん取り入れているところ。
だからこそ、昔の風情と今の便利さやおしゃれさがすごく自然に混ざり合っていて、歩いているだけでワクワクします。
もし宮島に行くことがあったら、神社やグルメだけじゃなく、建物や街並みにも注目してみてほしいです。
レトロとモダンが一緒に並ぶこの景色は、きっと旅の思い出に残り、新しい宮島の魅力にも出会えるはず。
歴史とともに今を生きる宮島の建築が、「時を超えた美しさ」ってこういうことなんだ、と教えてくれた気がします。